比例代表選挙における政党合併後の議席の増減についての数学的考察

 さて、ここからは一つの政党を政党 $0$ とし、他の政党を得票率が高い順に政党 $1$、政党 $2$、政党 $3$、…、政党 $n-1$ として、政党 $0$ の得票率は0~1まで0.001間隔で変化させ、他の政党の得票率は乱数で生成して正規化($\sum_{i=1}^{n-1}p_{i}=1-p_{0}$)して、政党 $0$ の得票率と合併後の議席数の増減の関係を確認したシミュレーションの結果である。立候補政党数 $n$ が12政党と6政党の場合で行い、12政党の場合の改選議席数 $C$ は6、10、23、28議席、6政党の場合は10議席にして行った。

 各政党の得票率の平均は次のグラフのようになった。

得票率平均(政党数12)
得票率平均(政党数6)

 政党数が 6 の場合の得票率は政党 $1$ と政党 $2$ が離れすぎているように見えるが、シミュレーションでの得票率は次のようにばらつきがある。

得票率の分布(政党数6、政党1と政党2)

 政党数が 12 の場合の政党 $1$ と政党 $2$ の得票率の分布、政党 $3$ と政党 $4$ の得票率の分布は次のようになっている。

票率の分布(政党数12、政党1と政党2)
得票率の分布(政党数12、政党3と政党4)

 シミュレーションの結果、政党 $0$ と政党 $1$ の合併後の議席数の増減(200回のシミュレーションの平均)は政党 $0$ の得票率 $p_{0}$ に対して次のグラフのようになった。

政党1との合併後の議席数の増減(政党数12、改選議席数6)
政党1との合併後の議席数の増減(政党数12、改選議席数10)
政党1との合併後の議席数の増減(政党数12、改選議席数23)
政党1との合併後の議席数の増減(政党数12、改選議席数28)
政党1との合併後の議席数の増減(政党数6、改選議席数10)

 増加と減少を繰り返しているが、これは合併前の政党 $0$ の得票率と議席数の積の小数部分 $\{ p_{0}C \}$ に周期性があるからで、その周期は $\frac{1}{C}$ になっている。

 立候補政党数が 12、改選議席数が 6 の場合、政党 $0$ と政党 $1$ が合併すると議席数が増えることもあるが、減る方が多い。先に述べたとおり、合併後に議席数が増えるのは合併前に両方の政党が小数部分の順位で議席を獲得していない場合に限り、合併後に議席数が減るのは合併前に両方の政党が小数部分の順位で議席を獲得していた場合に限る。そこで、次のグラフのように、政党 $0$ と政党 $1$ が合併前に小数部分の順位で議席を獲得できた割合に合併後の議席数の増減のグラフを重ねてみる。

政党0と政党1の合併前の小数部分での議席獲得と合併後の獲得議席の増減の関係(政党数12、改選議席数6)

 各政党の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ と小数部分の順位で議席を獲得できる確率の関係は次のようになっている。

小数部分の順位で議席を獲得できる確率(政党数12、改選議席数6)

 政党 $0$ の得票率 $p_{0}$ と各政党の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ の平均値の関係を見ると、次のグラフのようになっている。

政党0の得票率と各政党の小数部分の関係(政党数12、改選議席数6)

 このように、200件のシミュレーションの平均を見ると、合併前の政党 $1$ は小数部分 $\{ p_{1}C \}$ がほとんど 0.45 を超えていて、小数部分の順位で議席を獲得できる確率は約 8 割ある。したがって、合併前の政党 $0$ が小数部分で議席を獲得すると、合併前に両方の政党が小数部分の順位で議席を獲得している状態となり、合併後に議席数を減らす確率が増す。ただし、小数部分の和が一の位に繰り上がるだけでなく小数部分の順位でも議席を獲得できれば議席を減らさずに済む。そこで、合併前の政党 $0$ がほぼ確実に小数部分で議席を獲得できた後は得票率 $p_{0}$ が上がるにつれて小数部分 $\{ p_{0}C \}$ も上昇して合併後に小数部分 $\{ (p_{0}+p_{1})C \}$ の順位で議席を獲得できる確率も上がり、議席を減らす確率も減る。

 では、政党 $0$ の得票率が増加するにつれて小数部分がほぼ単調に減少する政党 $4$ と政党 $0$ が合併した場合はどうなるか、立候補政党数が 12、改選議席数 6 の場合で確認してみる。

政党4との合併後の議席数の増減(政党数12、改選議席数6)
政党0と政党4の合併前の小数部分での議席獲得と合併後の獲得議席の増減の関係(政党数12、改選議席数6)

 合併後に議席数が減ることもあるが、増える方が多い。
 小数部分 $\{ p_{4}C \}$ と小数部分の順位で議席を獲得できる確率の関係を見ると、政党 $4$ は政党 $1$ と比べて議席を獲得しにくいことが分かる。さらに、小数部分 $\{ p_{4}C \}$ の平均が政党 $1$ と比べて小さいので、合併前に小数部分の順位で議席を獲得していないことが多く、合併後に議席を減らす「政党 $0$ と政党 $4$ の両方が合併前に小数部分の順位で議席を獲得している状態」にはなりにくい。そして、政党 $0$ が合併前に小数部分の順位で議席を獲得していない時には、合併前に両方の政党が小数部分の順位で議席を獲得していない状態となり、合併後に議席数を増やす確率が増す。

 ところで、政党 $4$ の小数部分 $\{ p_{4}C \}$ の平均値は得票率 $p_{4}$ の平均値と改選議席数 $C $ の積の辺りなっているが、政党 $1$、政党 $2$、政党 $3$ の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ の平均値は政党 $0$ の得票率が小さい時は 0.5 辺りになっている。小数部分 $\{ p_{i}C \}$ の平均値が 0.5 になるのは小数部分が 0~1 の範囲でほぼ一様に分布しているからで、政党 $4$ などのように小数部分 $\{ p_{i}C \}$ の平均値が 0.5 に達しないのは、得票率の $p_{i}$ の平均値と改選議席数 $C$ の積を中心にして上下には分布しているが狭い範囲で、0~1 の範囲でほぼ一様に分布しているとは言えないかららしい。ただし、全政党の小数部分の総和には次のように整数になるような制限があるので、慎重に検討する必要があるらしい。

\begin{equation}
\sum_{i=0}^{n-1}\{p_{i}C\} = C - \sum_{i=0}^{n-1}\lfloor p_{i}C \rfloor \label{eq:小数部分の総和の制限} \tag{23}
\end{equation}

 そこで、政党 $0$ の得票率 $p_{0} \approx 0, 0.3, 0.6$ で政党 $1$ と政党 $4$ の小数部分 $\{ p_{1}C \}, \{ p_{4}C \}$(各2000件)がどのように分布しているか確認した。

政党1と政党4の小数部分の度数分布多角形(政党数12、改選議席数6)

 政党 $1$ は $p_{0} \approx 0, 0.3$ の時は一様分布とみなせそうであるが、$p_{0} \approx 0.6$ では $0.3 \lt \{ p_{1}C \} \lt 0.6$ で低く、$0.7 \lt \{ p_{1}C \} \lt 1.0$ では少し高くなっている。その結果 $\{ p_{1}C \}$ の200件平均が $p_{0} \approx 0.6$ で 0.5 よりも大きくなっている。
 一方、政党 $4$ は小数部分が大きくなるにつれて減少し、$p_{0} \approx 0$ よりも $p_{0} \approx 0.3$ の方が傾きが大きく、さらに傾きが大きい $p_{0} \approx 0.6$ では $\{ p_{4}C \} \gt 0.6$ になることがない。

 改選議席数が多い場合($C=28$)についても確認した。

政党0の得票率と各政党の小数部分の関係(政党数12、改選議席数28)
政党1と政党4の小数部分の度数分布多角形(政党数12、改選議席数28)

 $p_{0} \approx 0.6$ の政党 $4$ は小数部分が大きくなるにつれて減少していて、その結果、$p_{0} \approx 0.6$ の時の小数部分 $\{ p_{4}C \}$ が 0.5 よりも小さくなっているが、それ以外は一様分布とみなせそうである。

 また、各政党の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ と小数部分の順位で議席を獲得できる確率の関係は次のようになっていて、改選議席数 $C=6$ の場合と比べて、政党間の差が縮まっていて、小さすぎない政党ならば小数部分の順位で議席を獲得しやすくなっている。

小数部分の順位で議席を獲得できる確率(政党数12、改選議席数28)

 参考のため、立候補政党数が 6、改選議席数が 10 の場合の政党0の得票率 $P_{0}$ と各政党の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ の関係、各政党の小数部分 $\{ p_{i}C \}$ と小数部分の順位で議席を獲得できる確率の関係を載せておく。

政党0の得票率と各政党の小数部分の関係(政党数6、改選議席数10)
小数部分の順位で議席を獲得できる確率(政党数6、改選議席数10)
日記
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