2026/2/8の第51回衆議院議員総選挙では比例代表制の方で自民党に81議席が配分され、これは比例代表制で決まる総数176議席の46%に当たり得票率の36.72%よりも9.3%も多い。ドント方式での配分は大政党に有利と言われていて、その通りになったのだが、比例ブロックを無くして全国1ブロックで実施されていたらどうなるかを検証したら自民党に配分された議席の比率は得票率と大差なく、大政党が有利とは言えなくなった。その理由を数式を使って調べたら、議席の総数が少ないと大政党が得することが分かった。また、争う政党数が多くなっても大政党が得するようで、比例ブロックに分かれていた第51回衆院選では、各ブロックでの配分議席が少なく、争っている政党も多かったので、一番大きな政党である自民党に得票率よりも9.3%も多い議席が配分された。


さて、ここからはドント方式での配分が大政党に有利なことを数式を使って証明する。
まずは変数の定義から。いちいち書かないが、各比例ブロックごとである。
- C:各比例ブロックで配分される議員の総数(以下、「定数」と表記)
- n:各比例ブロックに名簿を提出している政党の数(以下、「政党数」と表記)
- X:各比例ブロックの有効票数(以下、「有効票数」と表記)
- D:ドント方式で1議席を獲得するのに必要な票数(以下、「当選ライン」と表記)
- $P_{i}$:政党($i=1,2,3, \dots ,n$)
- $x_{i}$:政党 $P_{i}$ の得票数
- $得票率_{i}$:政党 $P_{i}$ の得票率($0 \leqq 得票率_{i} \lt 1$)
- $y_{i}$:政党 $P_{i}$ に $得票率_{i}$ で配分された場合の議席数(小数)
- $Y_{i}$:政党 $P_{i}$ にドント方式で配分される議席数(以下、「獲得議席数」と表記)
ドント方式では、全政党(党 $P_{1}, P_{2}, P_{3}, \dots ,P_{i}, \dots ,P_{n}$)は、以下の値を並べたリストを持っている。
- 政党 $P_{1}$ の商の列:$Q_{1}=\left(\frac{x_{1}}{1},\frac{x_{1}}{2},\frac{x_{1}}{3},\frac{x_{1}}{4}, \dots \right)$
- 政党 $P_{2}$ の商の列:$Q_{2}=\left(\frac{x_{2}}{1},\frac{x_{2}}{2},\frac{x_{2}}{3},\frac{x_{2}}{4}, \dots \right)$
- 政党 $P_{3}$ の商の列:$Q_{3}=\left(\frac{x_{3}}{1},\frac{x_{3}}{2},\frac{x_{3}}{3},\frac{x_{3}}{4}, \dots \right)$
- $\hspace{30pt}\vdots$
- 政党 $P_{i}$ の商の列:$Q_{i}=\left(\frac{x_{i}}{1},\frac{x_{i}}{2},\frac{x_{i}}{3},\frac{x_{i}}{4}, \dots \right)$
- $\hspace{30pt}\vdots$
- 政党 $P_{n}$ の商の列:$Q_{n}=\left(\frac{x_{n}}{1},\frac{x_{n}}{2},\frac{x_{n}}{3},\frac{x_{n}}{4}, \dots \right)$
すべての政党のすべての商を一つの大きな集合 $\mathbf{Q}_{all}$ にまとめる。
$$\mathbf{Q}_{all}=\left\{ \frac{x_{1}}{1},\frac{x_{1}}{2}, \dots ,\frac{x_{2}}{1},\frac{x_{2}}{2}, \dots ,\frac{x_{n}}{1},\frac{x_{n}}{2}, \dots \right\}$$
この集合 $\mathbf{Q}_{all}$ の要素を大きい順に並べて、C番目までが選ばれ、選ばれた要素の内、政党 $P_{i}$ のリスト $Q_{i}$ に含まれる要素の数が政党 $P_{i}$ の獲得議席数 $Y_{i}$ になる。
そして、このC番目の要素(商)がドント方式で1議席を獲得するのに必要な票数、当選ライン $D$ になる。
当選ライン $D$ が分かれば、政党 $P_{i}$ の獲得議席 $Y_{i}$ も得票数 $x_{i}$ を使って次のように見積もれる。
\begin{equation}
Y_{i}=\left\lfloor \frac{x_{i}}{D} \right\rfloor \label{eq:基本の式}
\end{equation}
\eqref{eq:基本の式} は $\frac{x_{i}}{D}$ の整数部分なので、小数部分(小数点以下の部分)を $\left\{\frac{x_{i}}{D}\right\}$ と表すと、次のようになる。
\begin{equation}
Y_{i}=\frac{x_{i}}{D} - \left\{\frac{x_{i}}{D} \right\} \label{eq:Yi分割式}
\end{equation}
この小数部分 $\left\{\frac{x_{i}}{D}\right\}$ はドント方式の問題を理解するのに重要な要素で頻繁に登場するので、次のように書くことにする。
\begin{equation}
\left\{\frac{x_{i}}{D} \right\}=\epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1) \label{eq:小数点以下}
\end{equation}
\eqref{eq:Yi分割式} は次のようになる。
\begin{equation}
Y_{i}=\frac{x_{i}}{D} - \epsilon_{i} \label{eq:Yi}
\end{equation}
ところで、各政党に配分された議席数 $Y_{i}$ を全ての政党で足し合わせると定数 $C$ になるので、次の式が成立する。
\begin{equation}
\displaystyle\sum_{i=1}^{n} Y_{i}=C \label{eq:定数}
\end{equation}
\eqref{eq:Yi} を \eqref{eq:定数} に代入すると次のようになる。
\begin{equation}
\sum_{i=1}^{n} \left( \frac{x_{i}}{D} - \epsilon_{i} \right)=\sum_{i=1}^{n} \frac{x_{i}}{D} - \sum_{i=1}^{n} \epsilon_{i}=C \label{eq:代入1}
\end{equation}
したがって、当選ライン $D$ は次のように表せる。
\begin{equation}
D=\frac{\sum_{i=1}^{n} x_{i}}{C+\sum_{i=1}^{n} \epsilon_{i}} \label{eq:当選ライン}
\end{equation}
当選ライン $D$ が数式で表せたので、\eqref{eq:当選ライン} を \eqref{eq:Yi} に代入する
\begin{equation}
Y_{i}=\frac{x_{i}}{\frac{\sum_{j=1}^{n} x_{j}}{C+\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}} - \epsilon_{i}=\frac{x_{i}}{\sum_{j=1}^{n} x_{j}}\left(C+\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}\right) - \epsilon_{i} \label{eq:代入2}
\end{equation}
$\sum_{j=1}^{n} x_{j}$ は有効票数 $X$ なので、$\eqref{eq:代入2}$ は次のようになる。
\begin{equation}
Y_{i}=\frac{x_{i}}{X}C\left(1+\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \label{eq:代入2の簡略化}
\end{equation}
ここで、$\frac{x_{i}}{X}$ は政党 $P_{i}$ の $得票率_{i}$ なので、$\eqref{eq:代入2の簡略化}$ は次のように表せる。
\begin{equation}
Y_{i}=得票率_{i} \times C\left(1+\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \label{eq:代入2の簡略化2}
\end{equation}
改めて $\eqref{eq:小数点以下}$ も書いておく。
\begin{equation}
\epsilon_{i}=\left\{\frac{x_{i}}{D} \right\} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1) \label{eq:小数点以下2}
\end{equation}
これらの式から、$\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}$ が大きくなると、ドント方式で配分される議席数 $Y_{i}$ が多くなり、それは、$\eqref{eq:代入2の簡略化2}$ を見て分かる通り、得票率の大きい大政党ほど得をするようになっている。$\epsilon_{j}$ は得票数 $x_{j}$ を当選ライン $D$ で割った小数部分、すなわち票にならなかった端数である。そして、この端数の総和 $\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}$ は争っている政党の数 $n$ が多いほど大きくなる。少数政党が乱立するほど、大政党が得をする仕組みになっている。
また、配分される議席の総数 $C$ が小さいと大政党が得をすることも分かる。最も議席数の多い比例ブロック(近畿ブロック)でも、28議席を11政党が奪い合っていて、最大剰余方式なら獲得できた弱小2政党の議席(2議席)を得票率が1位と2位の政党が奪って分け合っている。20議席を11政党が奪い合っている九州ブロックでは弱小2政党の議席(最大剰余方式なら獲得できた2議席)を得票率1位の政党が奪って2議席増やしている。東京ブロックも19議席を11政党が奪い合っていて弱小2政党の議席(最大剰余方式なら獲得できた2議席)を得票率1位の政党が奪って2議席増やしている。中国ブロックも10議席を10政党が奪い合っていて弱小2政党の議席(最大剰余方式なら獲得できた2議席)を得票率1位の政党が奪って2議席増やしている。23議席を11政党が奪い合っている南関東ブロックはちょっと特殊で、弱小2政党の議席(最大剰余方式なら獲得できた2議席)と得票率3位の政党の議席、最大剰余方式なら獲得できた3議席の内の1議席の合計3議席を得票率1位と2位の政党が奪って、1位の政党は2議席増やし、2位の政党は1議席増やしている。21議席を11政党が奪い合っている東海ブロックも特殊で、弱小3政党の議席(最大剰余方式なら獲得できた3議席)を得票率1位と3位(2位ではなく3位)の政党が奪って、それぞれ2議席、1議席増やしている。その他のブロックは得票率1位の政党が最大剰余方式で獲得できた議席よりも1議席多く獲得している。見落としはご容赦を。
このように、比例ブロックがあると、各ブロックに配分される議席の総数 $C$ が小さくなって、大政党が得するようになっている。それに対して、比例ブロックを無くして全国1ブロックで選挙した場合は、176議席を12政党が争うことになり、比例ブロックがある時よりも、\eqref{eq:代入2の簡略化2} の $\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C}$ が小さくなって大政党が得する傾向が薄まる。
ところで、$得票率_{i}$ と定数 $C$ の積は得票率で配分された場合の政党 $P_{i}$ の議席数 $y_{i}$ であるから、$\eqref{eq:代入2の簡略化2}$ は次のように表せる。
\begin{equation}
Y_{i}=y_{i} \left(1+\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式}
\end{equation}
\eqref{eq:Yiの最終式} は得票率で配分された場合の正当な議席数 $y_{i}$ とドント方式で配分された議席数との差が分かるようになっている。正当な議席数が多い政党ほど、ドント方式になっていることで得をしている。どのように得をしているかは、\eqref{eq:代入2の簡略化2} で見た場合と同じである。
このようにドント方式は大政党が得をする配分方法で、比例ブロックに分けて少ない議席を争わせると顕著になる。さらに、今の日本のようにたくさんの政党が存在する場合は、大政党が得をする傾向が強くなるので、ドント方式から最大剰余方式に変えるべきで、比例ブロックも廃止して全国1議席で選挙した方が良い。ましてや、議員定数削減などをしたら、ますます大政党が有利になってしまう。それは小選挙区だけの問題ではなく比例代表制でも同じである。また、参院選の比例代表制もドント方式で改選議席数が少ないので大政党が有利になっている。



コメント
$Y_{i}=\left\lfloor \frac{x_{i}}{D} \right\rfloor$ の詳細。
ドント方式では各政党の得票数を除して最後の議席になる商が当選ラインDよりも大きい。
$\frac{x_{i}}{Y_{i}} \geqq D$
$Y_{i}$について解くと
$Y_{i} \leqq \frac{x_{i}}{D}$
等号にすると、
$Y_{i} + \alpha_{i} = \frac{x_{i}}{D} \hspace{14pt}(0 \leqq \alpha_{i} \lt 1)$
$Y_{i} = \frac{x_{i}}{D} - \alpha_{i} $
本文の式と比較すると、
$\alpha_{i} = \epsilon_{i}$
後は、本文を逆に辿れば、
$Y_{i}=\left\lfloor \frac{x_{i}}{D} \right\rfloor$
(12)式の考察 by #Gemini
$Y_{i} - y_{i}$ は、まさに「ドント方式によって発生した得票率からの乖離(議席の増減)」そのものです。実は、これまでの議論を整理すると、非常に美しく、かつ残酷なほど明快な数式にまとまります。
結論から言うと、以下のようになります。
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### 議席増減の数式
理想的な比例配分議席 $y_{i}$ からの増減幅を $\Delta Y_{i}$ とすると、次の式で表せます。
$$\Delta Y_{i} = Y_{i} - y_{i} = y_{i} \left( \frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i}$$
この式は非常に「綺麗」であり、かつ政治的な意味が一目でわかります。
### 式の構成要素と意味
この式は、2つの相反する力のバランスでできています。
1. **第一項:$y_{i} \times \frac{\sum \epsilon_{j}}{C}$ (吸い上げた議席の還流)**
全政党から没収された端数の総和($\sum \epsilon_{j}$)が、各党の勢力比($y_{i}/C$)に応じて「ボーナス」として配分される量です。**政党が大きければ大きいほど、この値は際限なく大きくなります。**
2. **第二項:$\epsilon_{i}$ (自分の端数の没収)**
その政党自身が持っていた、1議席に満たない端数です。これは**政党の規模に関わらず、必ず $0 \leqq \epsilon_{i} < 1$ の範囲**に収まります。
### 大政党と小政党の運命の分かれ目
この $\Delta Y_{i}$ がプラスになれば「得」をし、マイナスになれば「損」をします。
* **大政党の場合($y_{i}$ が大きい)**
第一項の「ボーナス」が、自分の端数(最大でも 1 未満)を簡単に上回ります。そのため、$\Delta Y_{i} > 0$ となり、常に得票率以上の議席をさらっていきます。
* **小政党の場合($y_{i}$ が小さい)**
第一項の「ボーナス」がほとんどもらえません。結果として、自分の端数 $\epsilon_{i}$ だけを一方的に奪われる形になり、$\Delta Y_{i} < 0$ となって、本来なら獲得できるはずの議席(最大剰余方式なら取れていた議席)を失います。
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### まとめ:なぜ大政党が得をするのか
この数式から、論文の結論を以下のように「綺麗に」締めくくることができます。
各党の議席増減幅は $\Delta Y_{i} = y_{i} (\sum \epsilon_{j} / C) - \epsilon_{i}$ で決定される。
右辺第二項(没収分)が $1$ 未満に限定されているのに対し、第一項(還流分)は政党の規模 $y_{i}$ に比例してどこまでも大きくなる。
したがって、ドント方式とは**「全政党から一律に奪った端数を、強者に集中投資するシステム」**であると言える。
この式こそ、あなたが論文の冒頭で指摘された「全国1ブロックなら大政党が有利とは言えなくなった(= $C$ が大きくなって第一項が小さくなったため)」という現象を完璧に説明する「決定打」の数式ではないでしょうか。
この数式を、論文の「結論」または「考察」の核心として配置するのはいかがでしょうか?
#比例代表制 #ドント方式