以前に書いた記事の修正版。
賃金を上げたら、その上昇分を価格転嫁しなければいけないのだが、価格転嫁したら物価も上がる。賃金が上がっても物価が上がったら買える量が減ることがある。
そんな「賃上げによる低所得者の貧困の悪化」を防ぐために、低賃金の労働者の賃金をそうでない労働者の賃金よりも大幅に上げて賃金の格差を縮めれば良さそうなことが分かった。
賃金の上昇分を価格転嫁すると貧困が悪化する?-2
- A: 40万円 → 48万円 (+8万円、20%増)
- B, C: 20万円 → 28万円 (+8万円、40%増)
- D, E: 10万円 → 20万円 (+10万円、100%増)
価格転嫁: 増えた賃金の合計44万円/月を、Xの必要量50個に転嫁します。
賃金の上昇分を価格転嫁すると貧困が悪化する?-2
- 44万円 ÷ 50個 = 8,800円/個
- Xの新しい価格: 10,000円 + 8,800円 = 18,800円/個 (88%上昇)
ただ、この例では、平均賃金の上昇率は44%なのに対して、物価上昇率が88%で平均賃金を上回っている。このことから、賃金の上昇率を全て価格転嫁した場合、平均賃金の上昇率が物価上昇率を上回ることは理論的に可能なのか?という疑問が生じた。
#Gemini に相談したところ、次の数式が導き出された。
$$\frac{R_y}{R_x} = \frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} + \frac{r}{R_x \cdot \sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$$
$$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)=r \quad (dv_j=0)$$
各変数は次の通り。
$R_x:平均賃金の上昇率$
$R_y:平均物価の上昇率$
$x_i:個々の賃金$
$n_i:賃金が x_i である人の数量$
$y_j:個々の物価$
$v_j:物価が y_j である品の生産量$
$dx_i:賃金 x_i の上昇分$
$dy_j:物価 y_j の上昇分$
$dv_j:物価が y_j である品の生産量 v_j の増産分$
$r:賃金上昇分の総額を物価に価格転嫁した際の差額$
$s_j:物価が y_j である品の売れ残り$
$k_{ij}:賃金 x_i の人が物価 y_j の品を購入した量$
$z_i:賃金 x_i の人が物価 y_j の品を購入した後に余った賃金$
1. 上昇前後の賃金の総額と物価の総額
$上昇前の賃金の総額:\sum_{i}(x_i \cdot n_i)$
$上昇後の賃金の総額:\sum_{i}((x_i+dx_i)\cdot n_i)$
したがって、賃金の総額の上昇分は
$$\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)$$
$上昇前の物価の総額:\sum_{j}(y_j \cdot v_j)$
$上昇後の物価の総額:\sum_{j}((y_j+dy_j) \cdot (v_j+dv_j))$
したがって、物価の総額の上昇分は
$$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)+\sum_{j}((y_j+dy_j) \cdot dv_j)$$
この式の第1項は生産量を変えなかった場合の物価の上昇分の総額を表し、第2項は上昇した物価での増産分の総額を表す。増産しなかった場合、$dv_j=0$ なので、物価の総額の上昇分は次のようになる。
$$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)$$
2. 価格転嫁の式(増産無し:$dv_j=0$)
ここからは、増産が無い場合、すなわち $dv_j=0$ の場合を考える。賃金上昇と物価上昇の関係を考える際には、主に生活必需品を想定しているので、需要が増えて増産が必要になることは想定しなくて良いと思われるからである。ただし、価格転嫁による物価の上昇を抑えるためや需要の増加による供給不足を防ぐために増産する場合は、別に考えなければいけない。ちなみに、一般的に物価上昇率は一定数を消費する際に要した費用で議論されるらしく、実際には価格が上がって消費量が減ったり、逆に生産量が増えて流通量が増えても、それは反映しないらしい。これは生産量が一定 $dv_j=0$ というよりも、物価 $y_j$ の品の総消費量(または購入量) $K_j=\sum_{i}(k_{ij} \cdot n_i)$ が一定ということだろう。
さて、賃金上昇分の物価への価格転嫁は次の条件を満たさなければいけない。
$$物価の総額の上昇分 \ge 賃金の総額の上昇分$$
$$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)=r \ge 0$$
3. 平均賃金の上昇率と平均物価の上昇率(増産無し:$dv_j=0$)
$上昇前の平均賃金:\overline{x}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(n_i)}$
$上昇後の平均賃金:\overline{x}'=\frac{\sum_{i}((x_i +dx_i)\cdot n_i)}{\sum_{i}(n_i)}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)+\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(n_i)}$
$平均賃金の上昇額:\overline{x}'-\overline{x}=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(n_i)}$
したがって、平均賃金の上昇率 $R_x$ は、
$$R_x=\frac{\overline{x}'-\overline{x}}{\overline{x}}=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$$
$上昇前の平均物価:\overline{y}=\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}$
$上昇後の平均物価:\overline{y}'=\frac{\sum_{j}((y_j+dy_j) \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}$
$平均物価の上昇額:\overline{y}'-\overline{y}=\frac{\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}$
したがって、平均物価の上昇率 $R_y$ は、
$$R_y=\frac{\overline{y}'-\overline{y}}{\overline{y}}=\frac{\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$$
もしも $dv_j=0$ を仮定しなければ、すなわち増産する想定だった場合、平均物価の上昇率はシンプルな式にはならない。
$上昇前の平均物価:\overline{y}=\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}$
$上昇後の平均物価:\overline{y}'=\frac{\sum_{j}((y_j+dy_j) \cdot (v_j+dv_j))}{\sum_{j}(v_j+dv_j)}$
平均物価の上昇率 $R_y$ は
$$R_y=\frac{\overline{y}'-\overline{y}}{\overline{y}}=\frac{\frac{\sum_{j}((y_j+dy_j) \cdot (v_j+dv_j))}{\sum_{j}(v_j+dv_j)}-\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}}{\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(v_j)}}$$
4. 賃金上昇率 $R_x$ と物価上昇率 $R_y$ の関係(増産無し:$dv_j=0$)
$R_x=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$
$R_y=\frac{\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$
ここで、「2.価格転嫁の式」を用いる。
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)=r$
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)=\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)+r$
$R_y=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)+r}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}+\frac{r}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$
$R_x$ の式から、$\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)=\sum_{i}(x_i \cdot n_i) \cdot R_x$ だから、
$$R_y=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} \cdot R_x + \frac{r}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$$
または、
$$\frac{R_y}{R_x}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} + \frac{r}{R_x \cdot \sum_j (y_j \cdot v_j)}$$
賃金上昇分だけ価格転嫁した場合($r=0$)、
$$\frac{物価上昇率}{賃金上昇率}=\frac{R_y}{R_x}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}=\frac{上昇前の賃金の総額}{上昇前の物価の総額}$$
賃金上昇分だけ価格転嫁した場合に、賃金上昇率が物価上昇率を上回るには、上昇前の物価総額が上昇前の賃金総額よりも大きいことが条件になる。上昇前から物価が高く、大量に売れ残っていれば、賃金上昇分を価格転嫁したら、賃金上昇率が物価上昇率を上回るのかもしれない。ただし、生産量が変わらない前提なので、売れ残っても同数を生産し続けて売れ残りを増やさなければいけないかもしれない。
5. 売れ残りや余剰賃金について
生産量 $v_j$ が総消費量(または購入量) $K_j=\sum_{i}(k_{ij} \cdot n_i)$ を上回る場合に、売れ残り $s_j$ が生じる。
$$s_j=v_j-K_j $$
各個人の支出と余剰賃金の関係は次の通り。
$$x_i=\sum{j}(k_{ij} \cdot y_j)+z_i$$
賃金 $x_i$ が増えたことで余剰賃金 $z_i$ が増えるなら、貯蓄や投資に使われる賃金の分も価格転嫁されていることになる。
6. 消費される分だけ生産すると仮定したら
$s_j=v_j-K_j=0$ を仮定すると、「4. 賃金上昇率 $R_x$ と物価上昇率 $R_y$ の関係」の式は次のようになる。
賃金上昇分だけ価格転嫁した場合($r=0$)、
$$\frac{物価上昇率}{賃金上昇率}=\frac{R_y}{R_x}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot K_j)}=\frac{上昇前の賃金の総額}{上昇前の消費支出の総額}$$
消費支出の総額が賃金の総額を上回ることはあり得ない。例えば、賃金の一部が預金や投資に使われた場合($z_i \gt 0$)である。すなわち、賃金上昇率が物価上昇率を上回ることはあり得ないという結論になる。
賃金上昇分以上に値上げ($r \gt 0$)したり、価格転嫁が不十分($r \lt 0$)だった場合、
$$\frac{R_y}{R_x}=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot K_j)} + \frac{r}{R_x \cdot \sum_j (y_j \cdot K_j)}$$
第1項は賃金上昇分だけ価格転嫁した場合($r=0$)と同じである。さらに、賃金上昇分以上に値上げ($r \gt 0$)したら第2項は正数なので、ますます、賃金上昇率が物価上昇率を上回ることはあり得ないという結論になる。また、価格転嫁が不十分($r \lt 0$)だった場合は第2項がマイナスになるので、賃金上昇率が物価上昇率を上回ることがありそうである。
コメント
次の変数と特別な条件を用いて、低賃金の労働者の平均賃金の上昇率だけなら、平均物価の上昇率を上回ることができるということを数式で表そうとしたのだけど、 #Gemini に問いかけた回答を見る限り、分かりやすい数式にはなりそうにない。残念。
$R_x:平均賃金の上昇率$
$R_{xL}:低賃金の労働者の平均賃金の上昇率$
$R_{xH}:高賃金の労働者の平均賃金の上昇率$
$R_y:平均物価の上昇率$
$x_{iL}:低賃金の労働者の個々の賃金$
$x_{iH}:高賃金の労働者の個々の賃金$
$n_{iL}:賃金が x_{iL} である人の数量$
$n_{iH}:賃金が x_{iH} である人の数量$
$n_i:賃金が x_i である人の数量(n_{iL}+n_{iH})$
$y_j:個々の物価$
$v_j:物価が y_j である品の生産量$
$dx_i:賃金 x_i の上昇分$
$dx_{iL}:賃金 x_{iL} の上昇分$
$dx_{iH}:賃金 x_{iH} の上昇分$
$dy_j:物価 y_j の上昇分$
$dv_j:物価が y_j である品の生産量 v_j の増産分$
$r:賃金の上昇分の総額を価格転嫁した際の物価の上昇分の総額との差額$
$k_{ij}:賃金 x_i の人が物価 y_j の品を購入した量$
$k_{iLj}:賃金 x_{iL} の人が物価 y_j の品を購入した量$
$k_{iHj}:賃金 x_{iH} の人が物価 y_j の品を購入した量$
$K_{Lj}:賃金 x_{iL} の人が物価 y_j の品を購入した量の総額$
$K_{Hj}:賃金 x_{iH} の人が物価 y_j の品を購入した量の総額$
$s_j:物価が y_j である品の売れ残り(v_j-K_{Lj}-K_{Hj})$
$z_i:賃金 x_i の人が物価 y_j の品を購入した後に余った賃金$
$z_{iL}:賃金 x_{iL} の人が物価 y_j の品を購入した後に余った賃金$
$z_{iH}:賃金 x_{iH} の人が物価 y_j の品を購入した後に余った賃金$
特別な条件:
(1) $dv_j=0$
(2) $s_j=0$
新しいスレッドで改めて数式を作ってもらったところ、次のような結末になった。
$$\frac{R_{xL}}{R_y} = \frac{\sum_j v_j y_j}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}} - \left(\frac{R_{xH}}{R_y}\right) \times \left(\frac{\sum_{iH} n_{iH} x_{iH}}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}}\right)$$
この式は、低賃金層の賃金上昇率が物価上昇率を上回るかどうか($\frac{R_{xL}}{R_y} > 1$ となるか)を、より明確に高賃金層の賃金上昇率と、賃金総額の格差の観点から考察できる形になっています。
ただし、途中で$r=0$を仮定しちゃってる。
$$\frac{R_{xL}}{R_y} = \frac{\sum_j v_j y_j}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}} - \left(\frac{R_{xH}}{R_y}\right) \times \left(\frac{\sum_{iH} n_{iH} x_{iH}}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}}\right)$$
右辺第一項は上昇前の物価の総額と上昇前の低賃金層の賃金の総額の比率で、これは常識的に(高賃金層もいるので供給は賃金が余りにくい低賃金層の需要よりも大幅に上回らなければいけないので)1よりも大きい。
右辺第二項の積の前半は高賃金層の平均賃金の上昇率と物価上昇率の関係。これが大きいと、低賃金層の平均賃金の上昇率が物価上昇率を上回りにくくなる。
右辺第二項の積の後半は上昇前の賃金の総額について高賃金層の賃金の総額と低賃金層の賃金の総額の比。格差が大きいと、低賃金層の平均賃金の上昇率が物価上昇率を上回りにくくなる。
この数式が正しいのならば、
低賃金層の賃金上昇率を上げて物価上昇率を上回るようにするには、高賃金層の賃金上昇率を抑えて、高賃金層と低賃金層の賃金の格差を縮めなければいけない。
r=0を仮定しなければ次の数式になるらしい。後で確認する。
$$\frac{R_{xL}}{R_y} = \frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{iL}(x_{iL} \cdot n_{iL})} - \left(\frac{R_{xH}}{R_y}\right) \times \left(\frac{\sum_{iH}(x_{iH} \cdot n_{iH})}{\sum_{iL}(x_{iL} \cdot n_{iL})}\right) - \frac{r}{R_y\cdot \sum_{iL}(x_{iL} \cdot n_{iL})}$$
格差を縮小した賃上げ例について数式の検証。
最後に導き出した数式を再掲します。
$$\frac{R_{xL}}{R_y} = \frac{\sum_j v_j y_j}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}} - \left(\frac{R_{xH}}{R_y}\right) \left(\frac{\sum_{iH} n_{iH} x_{iH}}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}}\right) - \frac{r}{R_y \sum_{iL} n_{iL} x_{iL}}$$
与えられた情報から、各変数を整理します。
* **物価関連**:
* $y_j$: 10,000円
* $v_j$: 50個
* $\sum_j v_j y_j = 50 \times 10,000 = 500,000$ (50万円)
* $R_y$: 88% = 0.88
* **賃金関連**:
* **A**: $x_{iH}=40万$, $n_{iH}=1$
* **B, C**: $x_{iL}=20万$, $n_{iL}=2$
* **D, E**: $x_{iL}=10万$, $n_{iL}=2$
差額 $r$ は、「物価上昇額の総額-賃金上昇額の総額」でした。
* 物価上昇額の総額: $50個 \times (18,800 - 10,000) = 50 \times 8,800 = 440,000$ (44万円)
* 賃金上昇額の総額: $44万円$
* $r = 44万 - 44万 = 0$
この事例では $r=0$ となるため、数式は以下の簡略化された形になります。
$$\frac{R_{xL}}{R_y} = \frac{\sum_j v_j y_j}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}} - \left(\frac{R_{xH}}{R_y}\right) \left(\frac{\sum_{iH} n_{iH} x_{iH}}{\sum_{iL} n_{iL} x_{iL}}\right)$$
---
### 検証1: 中間層 (B, C) を低賃金層に含める場合
* **低賃金層**: B, C, D, E
* 賃金総額 $\sum_{iL} n_{iL} x_{iL} = (2 \times 20万) + (2 \times 10万) = 60万$
* **高賃金層**: A
* 賃金総額 $\sum_{iH} n_{iH} x_{iH} = 1 \times 40万 = 40万$
* 賃金上昇率 $R_{xH} = \frac{48万-40万}{40万} = 0.20$
これらの値を数式に代入します。
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = \frac{50万}{60万} - \left(\frac{0.20}{0.88}\right) \left(\frac{40万}{60万}\right)$$
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = 0.8333 - (0.2273) \times (0.6667)$$
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = 0.8333 - 0.1515 = 0.6818$$
$$R_{xL} = 0.6818 \times 0.88 = 0.60 = 60\%$$
これは、前回の検証結果と一致します。
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### 検証2: 中間層 (B, C) を高賃金層に含める場合
* **低賃金層**: D, E
* 賃金総額 $\sum_{iL} n_{iL} x_{iL} = 2 \times 10万 = 20万$
* **高賃金層**: A, B, C
* 賃金総額 $\sum_{iH} n_{iH} x_{iH} = (1 \times 40万) + (2 \times 20万) = 80万$
* 賃金上昇率 $R_{xH} = \frac{(48万-40万) + 2 \times (28万-20万)}{80万} = \frac{8万+16万}{80万} = \frac{24万}{80万} = 0.30$
これらの値を数式に代入します。
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = \frac{50万}{20万} - \left(\frac{0.30}{0.88}\right) \left(\frac{80万}{20万}\right)$$
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = 2.5 - (0.3409) \times (4.0)$$
$$\frac{R_{xL}}{0.88} = 2.5 - 1.3636 = 1.1364$$
$$R_{xL} = 1.1364 \times 0.88 = 1.00 = 100\%$$
これも、前回の検証結果と一致します。
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このように、どちらのケースでも、導出した数式を用いることで、前回の検証結果を正確に導くことができることが確認できました。
この記事の最後の式、途中の代入を変えたら次の式になりそう。
$$\frac{R_x}{R_y}=\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)} - \frac{r}{R_y \cdot \sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$$
これは、改めて確認した方が良さそう。
$R_x=\frac{\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{i}(dx_i \cdot n_i)=r$
$R_x=\frac{\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-r}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}=\frac{\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}-\frac{r}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)=\sum_{j}(y_j \cdot v_j) \cdot R_y$
$$R_x=\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)} \cdot R_y-\frac{r}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$$
$$\frac{R_x}{R_y}=\frac{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}-\frac{r}{R_y \cdot \sum_{i}(x_i \cdot n_i)}$$
この記事の式
$R_y=\frac{\sum_{i}(x_i \cdot n_i)}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} \cdot R_x + \frac{r}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$
これって、価格転嫁の式を賃金上昇前の賃金や物価上昇前の物価で表現しただけの式だね。難しい変形なんか必要なかった。
価格転嫁の式に戻すと次のようになる。。
$\sum_{j}(y_j \cdot v_j) \cdot R_y=\sum_{i}(x_i \cdot n_i) \cdot R_x + r$
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)=\sum_{i}(dx_i \cdot n_i) + r$
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{i}(dx_i \cdot n_i) = r$
同様に低賃金層と高賃金層に分けた場合の価格転嫁の式を変形すると次のようになる。
$\sum_{j}(dy_j \cdot v_j)-\sum_{iL}(dx_{iL} \cdot n_{iL})-\sum_{iH}(dx_{iH} \cdot n_{iH})=r \ge 0$
↓
$R_y=\frac{\sum_{iL}(x_{iL} \cdot n_{iL})}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} \cdot R_{xL}+\frac{\sum_{iH}(x_{iH} \cdot n_{iH})}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)} \cdot R_{xH}+\frac{r}{\sum_{j}(y_j \cdot v_j)}$
低賃金層の平均賃金上昇率 $R_{xL}$ を上げつつ平均物価の上昇率 $R_y$ を抑えたければ、必要以上に価格転嫁しない($r=0$)のはもちろんのこと、高賃金層の平均賃金上昇率 $R_{xH}$ を低くすれば良い。当たり前の結論。