都会と田舎の境目に小さな小さなレストランがありました。
嵐が通り過ぎたある日、店長は特別な料理を用意しました。
「メニューはこれだけだけど美味しい料理ができた。この機会にたくさんのお客に来てもらおう」
店長は張り切っていました。料理は無料です。
新しい料理を作ったがんばっているお店としてテレビのニュース番組でも紹介されました。
「テレビを見たよ」
お友達に声をかけられて、店長はニコニコしていました。
テレビで紹介された次の日、店長は大皿に盛られた料理の前で客が来るのを楽しみに待っていました。テレビのおかげか、客はたくさん来ました。でも、店長は客を見ることができません。見えなかったのです。だから、たくさんの客が来ても分かりませんでした。
ほとんどの客は料理を一口食べると何も言わずに帰ってしまいました。ひとこと言って帰る客もいました。
「不味いな」
「美味しくない!」
店長は客の声を聞くことはできました。客の声は店長が望んでいたものではありませんでした。店長は怒って見えない客に向かって叫びました。
「がんばって作ってるんだ。文句を言うな!」
やがて、そのレストランはいつものメニューに戻りました。客はたくさん来ているのでしょうか?
客の姿は誰にも見えません。でも声を聞くことはできます。店員も料理を注文する客の声を聞いていました。その声はいつも同じで、嵐の前からいた常連客だけでした。
おしまい。
注文の少ないレストラン
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