「労働者協同組合」という経営方法が気になってる。
協同組合とは
労働者協同組合とは、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)に基づいて設立された法人で、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織です。
労働者協同組合 |厚生労働省
※労働者協同組合法は、一部を除き、令和4年10月1日から施行されます。施行に向けて必要な情報等について、今後本ページにてお知らせいたします。
組合の基本原理その他の基準及び運営の原則
1.労働者協同組合(以下「組合」という。)は、次に掲げる基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければならないこと。
労働者協同組合 |厚生労働省
(1)組合員が出資すること
(2)その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること
(3)組合員が組合の行う事業に従事すること
2.組合は、1のほか、次に掲げる要件を備えなければならないこと。
(1)組合員が任意に加入し、又は脱退することができること
(2)組合とその行う事業に従事する組合員との間で労働契約を締結すること
(3)組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず、平等であること
(4)組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有すること
(5)剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこと
3.組合は、営利を目的としてその事業を行ってはならないこと
4.組合は、特定の政党のために利用してはならないこと
2 労働者協同組合法のポイント
労働者協同組合法について|厚生労働省
○ 組合の基本原理に基づき、組合員は、加入に際し出資をし、組合の事業に従事する者とする。
〇 出資配当は認めない(非営利性)。剰余金の配当は、従事分量による。
○ 組合は、組合員と労働契約を締結する(組合による労働法規の遵守)。
○ その他、定款、役員等(理事、監事・組合員監査会)、総会、行政庁による監督、企業組合又はNPO法人からの組織変更、検討条項(施行後5年)等に関する規定を置く。
二 事業
1 組合の行う事業
(1) 組合は、一の1(1)の目的を達成するため、事業を行うものとすること。(第7条第1項関係)
(2) 組合は、労働者派遣事業その他の組合がその目的に照らして行うことが適当でないものとして政令で定める事業を行うことができないこと。(第7条第2項関係)2 事業従事者の人数要件
労働者協同組合法 概要|厚生労働省
(1) 総組合員の5分の4以上の数の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならないこと。(第8条第1項関係)
(2) 組合の行う事業に従事する者の4分の3以上は、組合員でなければならないこと。(第8条第2項関係)
五 管理
4 会計
労働者協同組合法 概要|厚生労働省
(1) 組合は、定款で定める額に達するまでは、毎事業年度の剰余金の 10 分の1以上を準備金として積み立てなければならないこと。(第76条第1項関係)
(2) 組合は、その事業規模又は事業活動の拡大を通じた就労の機会の創出を図るために必要な費用に充てるため、毎事業年度の剰余金の 20 分の1以上を就労創出等積立金として積み立てなければならないこと。(第76条第4項関係)
(3) 組合は、組合員の組合の事業に関する知識の向上を図るために必要な費用に充てるため、毎事業年度の剰余金の 20 分の1以上を教育繰越金として翌事業年度に繰り越さなければならないこと。(第76条第5項関係)
協同労働とは
私たちは、『協同労働』という働き方を実践しています。
協同労働とは | 日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
ワーカーズコープの組合員は、「出資」「経営」「労働」のすべてを担います。
事業に必要な資金は、みんなで出資します。
経営にはみんなで参加し、事業を運営します。経営方針も自分たちで決定します。
必要な仕事、やってみたいこと、改善が必要なこと等をみんなで話し合って決めます。
立場に関係なく、必要な仕事をみんなで担います。
もちろん、事業を継続するためには利益を得られるように務めます。
しかし、私たちが求めるものは、ともに働く仲間が自分らしく働けること。
そして、「働くこと」を通して地域を元気にすることです。
組合員も地域に暮らす市民です。市民の力でよりよい暮らし・地域づくりを目指しています。
労働者協同組合法の要旨は次の通り。
【目的】
・組合員が出資し、それぞれの意見を反映して事業が行われ、組合員自ら事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他の事項を定める。多様な就労の機会創出を促進し、地域の多様な需要に応じた事業を促進する。【労働者協同組合】
「協同労働」実現する労働者協同組合法が成立 多様な雇用機会の創出に期待:東京新聞 TOKYO Web(2020年12月5日 13時53分)
・基本原理(①組合員が出資する②事業に組合員の意見が適切に反映される③組合員が組合の事業に従事する)を通じ、持続可能で活力ある地域社会の実現に資する目的のものでなければならない。
・組合員と労働契約を締結しなければならない。
・組合員の議決権及び選挙権は、出資口数にかかわらず平等。
・営利を目的として事業を行ってはならない。
・特定の政党のために利用してはならない。
・労働者派遣事業を行うことができない。
・組合の設立は準則主義(官庁の認可は不要)。3人以上の発起人を要する。
・役員として理事3人以上及び監事1人以上を置く。
・毎年度の剰余金の10分の1以上を準備金として積み立てなければならない。
・毎年度の剰余金の20分の1以上を就労創出等積立金として積み立てなければならない。
・組合員の知識向上を図るため、毎年度の剰余金の20分の1以上を教育繰越金として翌年度に繰り越さなければならない。
それぞれの図を引用したいのだけど勝手には使えないと思うので自粛。
まず、労働者のほとんど(4分の3以上)は労働者協同組合の組合員。ただ、組合員の全員が労働者になる必要はなくて、総組合員の5分の4以上で良いらしい。だから、総組合員が5人、組合員の労働者が4人、組合員でない労働者が1人ということもある。
以前、「合同会社コミュニティメディア開発推進機構」の「開局STEP<例>」を読んで次のように書いた。
コミュニティFMはラジオをやりたい人たちが集まって自分たちで放送するというイメージがありましたが、少し違ったようです。開局メンバーは自分たちで放送するのではなくスタッフを募集して放送してもらい、自分たちは経営に専念するのかもしれません。
「きらら方式」の前にある壁 | ひとりネズミの本音
労働者協同組合では出資した人が組合員となって労働者になるようだから、労働者協同組合という形のコミュニティFMなら、出資した人が経営してパーソナリティやディレクターや放送機器の操作を行うことになるのだろう。そして、組合と組合員が労働契約を締結していて組合が組合員に賃金を支払うので、労働者協同組合という形のコミュニティFMなら、組合員のパーソナリティはボランティアではなさそうである。
コミュニティFMの株主になるメリットは何でしょう。メリットがなければ株主になってくれないでしょう。黒字経営が期待できないことは多くの人が知っていますから、配当金なんか期待できないでしょう。開局のための負債や赤字経営で純資産が減ってしまったら倒産、廃業、解散した時に出資したお金は戻ってきません。株主になるということは、お金を寄付するようなものです。どの程度の株主が集まるでしょう。どの程度のお金が集まるでしょう。ちなみに、前に書きましたが、エフエム上越の資本金は5000万円ですが利益剰余金がマイナス3000万円余りになって純資産は2000万円もありません。倒産、廃業、解散したら出資額の4割しか戻ってこないということでしょう。
「きらら方式」の前にある壁 | ひとりネズミの本音
「合同会社コミュニティメディア開発推進機構」の「開局STEP<例>」に載っていた方法ではコミュニティFMは株式会社で、私は株主のメリットに疑問を感じてたけど、労働者協同組合という形のコミュニティFMなら、株主のように出資するだけで配当を受け取ることは許されない。組合員なら、剰余金の配当なら仕事内容に応じて分配される。ただし、剰余金の全てではなく、剰余金の10分の1以上は準備金として積み立て、剰余金の20分の1以上は就労創出等積立金として積み立て、剰余金の20分の1以上を教育繰越金として翌年度に繰り越さなければいけない。だから、組合員に分配される額の総額は剰余金の8割以下。それ以前に、給料を支払えるくらいは稼がなくてはいけなくて、給料を支払ったら剰余金がマイナスになることもありそう。
ちなみに、剰余金をネット検索で調べたら、次のサイトが詳しく解説してくれてる。
剰余金とは
剰余金とは|資本剰余金と利益剰余金はどう違う?|freee税理士検索
剰余金とは「計上されなかった余り」といったイメージのもので、貸借対照表の純資産の株主資本から、資本金を差し引いたものをいいます。
剰余金には、資本剰余金と利益剰余金があります。
労働者協同組合での「剰余金」とは利益剰余金のことだろう。
そう言えば、労働者協同組合法第9条第5項に「組合員の責任は、その出資額を限度とする」と書いてあるのだけど、これは出資額以上の金銭的負担を強いられないということだろう。ただ、剰余金がマイナスになるような状況だと、脱退時に出資額の払い戻しを請求したとしても戻ってこないはず。
(脱退者の持分の払戻し)
第十六条 組合員は、第十四条又は前条第一項の規定により脱退したときは、定款で定めるところにより、その払込済出資額を限度として、その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができる。
2 前項の持分は、脱退した事業年度末における組合財産によって定める。
3 前項の持分を計算するに当たり、組合の財産をもってその債務を完済するに足りないときは、組合は、定款で定めるところにより、脱退した組合員に対し、その未払込出資額の全部又は一部の払込みを請求することができる。(時効)
第十七条 前条第一項又は第三項の規定による請求権は、脱退の時から二年間行わないときは、時効によって消滅する。(払戻しの停止)
労働者協同組合法 | e-Gov法令検索
第十八条 脱退した組合員が組合に対する債務を完済するまでは、組合は、持分の払戻しを停止することができる。
それはともかく、労働者協同組合という形のコミュニティFMなら、パーソナリティなどの組合員は出資しているし経営にも携わることになるのでコミュニティFMが赤字にならないように頑張る動機付けになるような気がする。多くのコミュニティFMではパーソナリティを雇ったり、無賃金のボランティアに頼ったりしているようだけど、出資した人がパーソナリティになった方が良い。
そう言えば、以前にラジオで難民などを支援するNPO法人に募金したいけど、その募金がNPO法人の利益にされるのが嫌だみたいな投稿があったけれど、NPO法人は営利を目的として事業を行ってはいけないのだけど、利益があってはだめなわけではない。NPO法人で働いている人たちの賃金など事業を行うのに必要なだけの利益は必要である。なんとなく、NPO法人にはボランティアみたいなイメージがあるけれど、彼らも生活費を稼がなければいけないのでボランティアではない。それは、営利を目的として事業を行ってはいけない労働者協同組合も同じである。従業員=組合員に賃金を支払えるくらいの利益は必要である。と、ここまで「利益」と書いたけれど、賃金などを支払った後に残った分が利益だから、本当は「利益」とは違うはず。企業なら「売上」とか呼ぶのだろうけど、NPO法人で働いている人の賃金を寄付から支払うのなら、その寄付は会計では何と呼んだら良いのか…、収入の一部ではあるが、私は詳しくないので良く分からない。「寄付がNPO法人の利益にされるのが嫌だ」ではなく「寄付がNPO法人の収入になるのが嫌だ」「寄付がNPO法人の賃金になるのが嫌だ」と投稿したのかもしれない。正確には覚えてない。
話は戻って、「合同会社コミュニティメディア開発推進機構」の「開局STEP<例>」では株式会社のコミュニティFMを作る方法で、「きらら方式」でも同じだと思うけど、2022年10月1日からは労働者協同組合という形のコミュニティFMが良いかもしれない。大量のボランティアに頼っていると「組合の行う事業に従事する者の4分の3以上は、組合員でなければならないこと」という条件を満たさなくなるけど…。
第八条 総組合員の五分の四以上の数の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならない。
労働者協同組合法 | e-Gov法令検索
2 組合の行う事業に従事する者の四分の三以上は、組合員でなければならない。
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