特別定額給付金は収入認定されなかった

 コロナ禍で特別定額給付金の支給が決まった時、生活保護世帯のことが気になった。生活保護制度には「補足性の原理」があるので、給付金が収入認定されて保護が停止されるのではないかと思ったからである。

(保護の補足性)
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

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(保護の停止及び廃止)
第二十六条 保護の実施機関は、被保護者が保護を必要としなくなつたときは、速やかに、保護の停止又は廃止を決定し、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。

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 しかし、収入認定されないことがすぐに報道された。ほっとしたのだけど、その理由に関しては調べなかった。最近になって、理由が気になったので、ネットで検索して確認してみたら、厚生労働省社会・援護局保護課長の通知が見つかった。

 今般、別添1「特別定額給付金について」(令和2年4月 30 日総務省自治行政局地域政策課特別定額給付金室長事務連絡。以下、「総務省事務連絡」という。)及び別添2「令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金の支給について」(令和2年5月1日府子本第 575 号内閣府子ども・子育て本部統括官通知。以下、「内閣府通知」という。)のとおり、特別定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金(以下「子育て給付金」という。)の支給が市町村(特別区を含む。以下同じ。)において行われることとなっている。
 特別定額給付金及び子育て給付金の生活保護制度上の取扱いについては、各給付金の趣旨・目的を踏まえ、下記のとおり取り扱うこととしたので、遺漏なきよう、貴管内実施機関に対する指導方よろしくお願いする。
 なお、本通知は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245 条の9第1項及び第3項の規定による処理基準であることを申し添える。

020501特別定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金の生活保護制度上の取扱いについて

1 収入認定の取扱いについて

 特別定額給付金及び子育て給付金は、その趣旨として、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」(令和2年4月 20 日閣議決定)において、「新型インフルエンザ等対策特別措置法の緊急事態宣言の下、生活の維持に必要な場合を除き、外出を自粛し、人と人との接触を最大限削減する必要がある。医療現場をはじめとして全国各地のあらゆる現場で取り組んでおられる方々への敬意と感謝の気持ちを持ち、人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという国難を克服しなければならない。」と示されていることから、こうした趣旨に鑑み、収入認定においては下記のとおり取り扱うこととする。

(1)特別定額給付金について

 特別定額給付金は、総務省事務連絡において、施策の目的として、「感染拡大防止に留意しつつ、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」とされ、給付対象者については、「基準日(令和2年4月 27 日)において住民基本台帳に記録されている者」とされており、被保護者も給付の対象となっている。
 被保護者に特別定額給付金が支給された場合の収入認定の取扱いについては、こうした趣旨・目的に鑑み、収入として認定しないこととする。
 なお、災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金・見舞金等とは異なり、当該給付金の全額を収入として認定しないこととするので、自立更生計画等を徴取する必要はないこと。

020501特別定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金の生活保護制度上の取扱いについて

 とても分かりにくい。
 趣旨に関しては「一般的な生活費」として使われることではなく、ウイルスと戦うための「軍資金」という特別な支出ということだろうか?
 目的に関しては「家計への支援」と書いてあるけれど、全ての人に大至急支給しなければいけないので、収入認定のような面倒な手続きを省くということだろうか?

 ちなみに、「災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金・見舞金等」の場合は、受給した金額のうち、収入認定されないのは「自立更生のために当てられる費用として実施機関が必要と認めた」額だけらしい。

 この下に、「(2)子育て給付金について」と「(3)その他の給付金について」で「収入として認定しない」理由が書いてあって、「(3)その他の給付金について」については、その後の各種「給付金」が収入として認定されるか否かの基準になるかもしれない。

(3)その他の給付金について

 現下の情勢に対応して、各地方自治体が独自の施策として実施する給付金(商品券等を含む)については、当該給付金の趣旨・目的が、下記のいずれかに該当する場合は、収入として認定しない取扱いとする。

ア 特別定額給付金と同様の趣旨・目的、給付対象者であれば、収入として認定しないこと。

イ 災害等によって損害を受けた見舞金と同様の趣旨・目的であれば、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和 36 年4月1日厚生省発社第 123 号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という)第8の3の(3)のオに定める、「当該被保護世帯の自立更生のためにあてられる額」につき、収入として認定しないこと。

ウ 子育て世帯、ひとり親世帯、障害者、高齢者等の福祉の増進を図るため、地方公共団体又はその長が支給する金銭という趣旨・目的であれば、次官通知第8の3の(3)のケに定める額の範囲内につき、収入として認定しないこと。なお、額の範囲についてこれによりがたい場合は、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和 38 年4月1日社発第 246 号厚生省社会局長通知)第8の2の(6)のイにあたるものとして、厚生労働大臣に情報提供すること。

020501特別定額給付金及び令和2年度子育て世帯への臨時特別給付金の生活保護制度上の取扱いについて

マストドンで「保護の補足性の原理」(収入認定)の運用について書いたスレッド(2025/6/29)

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