5人(ABCDE)が暮らす世界です。
Aという経営者の下でXという生活必需品を作ってました。
Xの価格は1万円で、一人10個/月、5人で50個/月必要です。
B、Cは賃金が20万円/月、D、Eは10万円/月でした。
経営者のAは40万円/月でした。
ある月から賃金が1割上がりました。
B、Cは賃金が22万円/月、D、Eは11万円/月になり、
経営者のAは44万円/月になりました。
増えた賃金の合計10万円/月を価格転嫁します。
Xの価格は10万円/月÷50個/月=2千円上昇します。
Xの価格は1万2千円になりました。
D、Eは賃金が上がる前は10個/月買えましたが、
賃金が上がった後は9個/月しか買えなくなりました。
賃金が上がって貧しくなった?このパラドックスを解いて、
https://mastodon-japan.net/@ishii00141/111813003582190449
賃金が上がったら価格転嫁しても、
5人の皆が裕福になることを証明しましょう。
経営者Aの元の賃金を10万円/月に低くした場合も考えてみましょう。
表にしてみる。
まずは基本の状態。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 400,000 | 0 | 10 | 300,000 |
B | 200,000 | 0 | 10 | 100,000 |
C | 200,000 | 0 | 10 | 100,000 |
D | 100,000 | 0 | 10 | 0 |
E | 100,000 | 0 | 10 | 0 |
次は、賃金を一律に1割上げた場合。賃金合計の上昇分10万円をXの価格に転嫁したことで、Xの価格は1万2千円に上昇。D、Eの賃11万円では9個しか買えず、余った賃金の2千円ではXを買えず、必要な10個に至らない。その結果、Xは48個しか買われず、2個余り、売り上げは57万6千円にしかならず、上昇したのは7万6千円だけで、賃金合計の上昇分10万円に至らず、価格転嫁によって2万4千円のマイナスになった。Aは余った賃金が2万円上昇している。経営者であるAだけが裕福になったように見えるが、もしも価格転嫁による2万4千円のマイナスを補填したら、4千円のマイナスになる。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 440,000 | 10 | 10 | 320,000 |
B | 220,000 | 10 | 10 | 100,000 |
C | 220,000 | 10 | 10 | 100,000 |
D | 110,000 | 10 | 9 | 2,000 |
E | 110,000 | 10 | 9 | 2,000 |
次に、賃金を一律に1万円増やしてみる。賃金合計の上昇分5万円をXの価格に転嫁したことで、Xの価格は1万1千円に上昇。この状態であれば、D、EはXを10個買える。ただし、余った賃金は皆、基本状態と変わらず、裕福になった実感を得られない。さらに、賃金が高いほど賃金の上昇率が低く、不公平感が生じる可能性もある。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 410,000 | 2.5 | 10 | 300,000 |
B | 210,000 | 5.0 | 10 | 100,000 |
C | 210,000 | 5.0 | 10 | 100,000 |
D | 110,000 | 10.0 | 10 | 0 |
E | 110,000 | 10.0 | 10 | 0 |
これまでは、経営者Aだけが裕福になりそうだったので、中小企業を想定して、経営者Aの賃金を次のように下げてみる。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 100,000 | 0 | 10 | 0 |
B | 200,000 | 0 | 10 | 100,000 |
C | 200,000 | 0 | 10 | 100,000 |
D | 100,000 | 0 | 10 | 0 |
E | 100,000 | 0 | 10 | 0 |
賃金を一律に1割上げた場合。賃金合計の上昇分7万円をXの価格に転嫁したことで、Xの価格は1万1400円に上昇。A、D、Eの賃11万円では9個しか買えず、余った賃金の7千4百円ではXを買えず、必要な10個に至らない。その結果、Xは47個しか買われず、3個余り、売り上げは535,800円にしかならず、上昇したのは35,800円だけで、賃金合計の上昇分7万円に至らず、価格転嫁によって34,200円のマイナスになった。もしも価格転嫁による34,200円のマイナスを補填したら、経営者は貧困がさらに悪化する。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 110,000 | 10 | 9 | 7,400 |
B | 220,000 | 10 | 10 | 106,000 |
C | 220,000 | 10 | 10 | 106,000 |
D | 110,000 | 10 | 9 | 7,400 |
E | 110,000 | 10 | 9 | 7,400 |
次に、賃金を一律に1万円増やしてみる。賃金合計の上昇分5万円をXの価格に転嫁したことで、Xの価格は1万1千円に上昇。この状態であれば、A、D、EはXを10個買える。ただし、余った賃金は皆、賃金上昇前と変わらず、裕福になった実感を得られない。さらに、賃金が高いB、Cは賃金の上昇率が低く、不公平感が生じる可能性もある。
住民 | 賃金 [円] | 上昇率 [%] | Xの購買数 [個] | 余った賃金 [円] |
---|---|---|---|---|
A | 110,000 | 10.0 | 10 | 0 |
B | 210,000 | 5.0 | 10 | 100,000 |
C | 210,000 | 5.0 | 10 | 100,000 |
D | 110,000 | 10.0 | 10 | 0 |
E | 110,000 | 10.0 | 10 | 0 |
このことを踏まえて、賃金が上がったら価格転嫁しても5人の皆が賃金上昇前よりも裕福になることを証明できるだろうか?
今の私にはできない。できたら、追記する。
私は昔から、物価と賃金の両方が上がることが良いことだなんて思ってない。それぞれの物やサービスや労働の価値は相対的なもので、通貨は比較するための道具に過ぎない。物の長さに例えると、50cmの物が55cmになって、30cmの物が33cmになっても、計る定規の基本的な長さが1cmから1.1cmに変わるだけである。1cmを1通貨とすれば、50cmは50通貨、30cmは30通貨。1.1cmを1通貨とすれば、55cmは50通貨、33cmは30通貨。変わらない。50cmの物が55cmになったからと言って喜ぶのは馬鹿げている。
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