ドント方式による損得の具体例

 小さな政党にとっては小選挙区制よりも比例代表制の方が良いのだろうが、ドント方式のままでは大政党が有利になることを【やっぱり比例代表制でのドント方式は大政党が得してた】で数式を使って証明した。比例ブロックの改選議席数を得票率で比例配分すると整数ではなく小数になるが、その配分数の整数部分を各政党に配分した後、残った小数点以下の部分をどうするかが問題になる。ドント方式では各政党の配分数の小数部分を合計した後、得票率で比例配分するので大政党の方が多く配分される。小さな政党は小数部分が大きくても配分される数が小さいので損をすることになる。大政党は小数部分が小さくても配分される数が大きいので得をすることになる。
 今回は、2026/2/8の第51回衆議院議員総選挙の結果を利用して、どの程度大政党が得をして小さな政党が損をしているかを各比例ブロックごとに計算してイメージしやすくした。

 【やっぱり比例代表制でのドント方式は大政党が得してた】で示した通り、ドント方式での獲得議席は次の式で表せる。

\begin{equation}
Y_{i}=y_{i} \left(1+\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式}
\end{equation}

 \eqref{eq:Yiの最終式} で使われている各変数の定義は次のとおりである。

  • $Y_{i}$:政党 $P_{i}\hspace{5pt}(i=1,2,3,\dots,n)$ にドント方式で配分される議席数(整数)
  • $y_{i}$:政党 $P_{i}$ に $得票率_{i}$ で比例配分された場合の議席数(小数)
  • $C$:各比例ブロックで配分される議席の総数(改選議席数)
  • $\epsilon_{i}$:政党 $P_{i}$ の得票数 $x_{i}$ を当選ライン $D$ で割った数の小数部分(端数)
    $\epsilon_{i}=\{\frac{x_{i}}{D} \}\hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)$

 \eqref{eq:Yiの最終式} を展開すると次のようになる。

\begin{equation}
Y_{i}=y_{i}+y_{i} \left(\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式の展開1}
\end{equation}

 ドント方式で配分される議席数 $Y_{i}$ は、得票率による比例配分議席数 $y_{i}$(第1項)と追加配分数(第2項+第3項)という形になっている。この追加配分数は第2項が第3項の $\epsilon_{i}$ よりも大きければプラスになるが、第2項が第3項の $\epsilon_{i}$ よりも小さければマイナスになるので、ここでは「得失議席数」と呼ぶ。

 さて、得票率による比例配分議席数 $y_{i}$(第1項)を比例ブロックごとに棒グラフにすると次のようになる。

得票率による比例配分議席数

 得失議席数(第2項+第3項)をグラフにすると次のようになる。

ドント方式による得失議席数

 小さな政党が損をして大きな政党が得をしていることがよく分かる。

 この得失議席数のグラフを作成するには当選ライン $D$ が分からないといけない。当選ライン $D$ については【やっぱり比例代表制でのドント方式は大政党が得してた】にも書いたが、各比例ブロックでの各政党の得票数 $x_{i}$ から定義通りに調べれば分かり、次のようになった。

比例ブロック当選ライン $D$(票)
北海道ブロック201,963
東北ブロック234,050
北関東ブロック253,036
南関東ブロック263,794
東京ブロック280,453
北陸信越ブロック231,686
東海ブロック262,801
近畿ブロック276,748
中国ブロック216,180
四国ブロック172,851
九州ブロック251,633

 得失議席数がどのようにプラスになったりマイナスになったりしたのかは、\eqref{eq:Yiの最終式の展開1} の第2項と第3項の $\epsilon_{i}$ をそれぞれ確認すれば見えてくる。第2項の方が大きければプラスになり、第3項の $\epsilon_{i}$ の方が大きければマイナスになる。

 その前に、\eqref{eq:Yiの最終式の展開1} の第1項 $y_{i}$ を整数部分と小数部分に分けておく。

\begin{equation}
Y_{i}=\lfloor y_{i} \rfloor+\{ y_{i} \}+y_{i} \left(\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) - \epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式の展開2}
\end{equation}

 \eqref{eq:Yiの最終式の展開2} の左辺は整数で、右辺第1項も整数だから、第2項、第3項、第4項の和も整数になる。第2項と第3項は共にプラスであるから、次の式が成り立つ。

\begin{equation}
\left \{\{ y_{i} \}+y_{i} \left(\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right)\right\} = \epsilon_{i} \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{i} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式の端数}
\end{equation}

 第2項と第3項の和の小数部分が端数 $\epsilon_{i}$ と等しくなる。さらに、\eqref{eq:Yiの最終式の展開2} の第2項と第3項の和を整数部分と小数部分に分けて \eqref{eq:Yiの最終式の端数} を使うと、次の式が成り立つことが分かる。

\begin{equation}
Y_{i}=\lfloor y_{i} \rfloor+ \left\lfloor \{ y_{i} \}+y_{i} \left(\frac{\sum_{j=1}^{n} \epsilon_{j}}{C} \right) \right\rfloor \hspace{14pt}(0 \leqq \epsilon_{j} \lt 1)\label{eq:Yiの最終式の変形}
\end{equation}

 各比例ブロックごとに、\eqref{eq:Yiの最終式の展開2} の第2項(得票率による比例配分議席数の小数部分)、第3項(端数追加配分)、第4項(端数項分)を積み上げ棒グラフにしたので、上記の式 \eqref{eq:Yiの最終式の展開2}、\eqref{eq:Yiの最終式の端数}、\eqref{eq:Yiの最終式の変形} を踏まえて確認してほしい。「小数部分」に「端数引前追加配分」を積み上げて整数の議席をオーバーした分がマイナスの「端数項分」と等しくなっている。また、「端数引前追加配分」と「端数項分」を比較すると、マイナスの「端数項分」の方が大きいことがあり、その場合は「得失議席数」($端数引前追加配分-端数$)がマイナスになる。

比例北海道ブロックの追加議席数
比例東北ブロックの追加議席数
比例北関東ブロックの追加議席数
比例南関東ブロックの追加議席数
比例東京ブロックの追加議席数
比例北陸信越ブロックの追加議席数
比例東海ブロックの追加議席数
比例近畿ブロックの追加議席数
比例中国ブロックの追加議席数
比例四国ブロックの追加議席数
比例九州ブロックの追加議席数

 さて、ここまでは配分される議席数で確認してきたので、数が小さくて大したことではないように思われるかもしれない。しかし、政党 $P_{i}$ に $得票率_{i}$ で比例配分された場合の議席数 $y_{i}$ の小数部分は、政党 $P_{i}$ に投票した人たちの票で成り立っている。その小数部分はどの程度の票で成り立っているのか、積み上げ棒グラフにしたので見てほしい。ほとんどの比例ブロックで100万票を超え、200万票を超えている比例ブロックもある。これだけの票の多くが自分が投票してない党の議席数を増やすために使われているのである。小さな政党に投票した場合は、その傾向が顕著になる。それがドント方式である。そんなドント方式は次の選挙までに改めた方が良い。

得票率による比例配分票の小数部分の票数
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