多くの人が自分でできる仕事を他の人に任せて料金を支払っていて、どうして他の人に任せるかというと時間がないからで、どうして時間がないかというと自分の仕事をしているからで、どうして他人に任せる仕事よりも自分の仕事を優先するのかというと自分で仕事をすれば賃金がもらえるからで、どうして賃金が必要なのかというと他人に仕事を任せるために料金が必要だからで、どうして料金を支払って他人に仕事を任せるかというと自分は賃金をもらうために仕事をしていて時間がないからで…、と永遠に循環するのだけど、それならば自分でできる仕事は他人に任せずに自分でやれば良いではないかと思っちゃうのだけど、そんなに単純ではないわけで…。
とりあえず、次の3ケース(a)(b)(c)について考える。
\( (a) \begin{cases}任せた仕事\cdots 4万円 \\任された仕事\cdots 5万円\end{cases}\cdots 差額=+1万円 \)
\( (b) \begin{cases}任せた仕事\cdots 4万円 \\任された仕事\cdots 4万円\end{cases}\cdots 差額=0円 \)
\( (c) \begin{cases}任せた仕事\cdots 5万円 \\任された仕事\cdots 4万円\end{cases}\cdots 差額=-1万円 \)
任された仕事と任せた仕事の差額がプラス(+)であれば任された仕事の方が価値があるように見える。任された仕事と任せた仕事の差額がマイナス(-)だと任せた仕事の方が価値があるように見える。ただし、任された仕事と任された仕事に使われた時間が同じ場合である。次の(d)(e)(f)のように使われた時間を追加すると、仕事の価値は同じに見える。
\( (d) \begin{cases}任せた仕事\cdots 4万円(4時間) \\任された仕事\cdots 5万円(5時間)\end{cases}\cdots 差額=+1万円 \)
\( (e) \begin{cases}任せた仕事\cdots 4万円(4時間) \\任された仕事\cdots 4万円(4時間)\end{cases}\cdots 差額=0円 \)
\( (f) \begin{cases}任せた仕事\cdots 5万円(5時間) \\任された仕事\cdots 4万円(4時間)\end{cases}\cdots 差額=-1万円 \)
(c)や(f)は赤字なので任された仕事を増やして黒字にしないといけない。
もしも任せた仕事を自分でできるのなら、任せずに自分でやれば料金が発生しない。ただし、その仕事をするために時間が取られるので賃金を受け取る仕事ができない。
\( (g) \begin{cases}任せず自分でやった仕事\cdots 0円(4時間) \\任されていた仕事\cdots 0円(5時間)\end{cases}\cdots 差額=0円、余った時間=+1時間 \)
\( (h) \begin{cases}任せず自分でやった仕事\cdots 0円(4時間) \\任されていた仕事\cdots 0円(4時間)\end{cases}\cdots 差額=0円、余った時間=0 \)
\( (i) \begin{cases}任せず自分でやった仕事\cdots 0円(5時間) \\任されていた仕事\cdots 0円(4時間)\end{cases}\cdots 差額=0円、余った時間=-1時間 \)
(g)の余った時間は本来は5時間を使って賃金を受け取るはずだった時間の内4時間を使って任せていた仕事をしたので1時間余ったということ。(i)は逆に、本来は4時間を使って賃金を受け取るはずだった時間では足りずに1時間を足して5時間で任せていた仕事をしたということ。
世の中には自分でできるのに他の人に任せている仕事が多い。他の人に任せている理由の一つが、賃金をもらう仕事をするので任せている仕事を自分でする時間がないからである。賃金をもらう仕事が自分にしかできないことであるならば、せざるを得ないが、そうでないならば、賃金をもらう仕事をやめて料金を支払って任せていた仕事を自分でやった方が良いように感じられる。もちろん、自分でできない仕事なら任せるしかないが…。たぶん、支払った料金の額よりも受け取った賃金の額の方が多いから、自分でできる仕事でも料金を支払って他人に任せるのだろう。でも、それって、双方に使われる時間が同じだとしたら、他人に任せた仕事よりも自分が任された仕事の方が価値があると判断していることにならないだろうか?
世の中には、無賃金だったり低賃金で働いてもらっている仕事が多い。賃金が低いのは支払われている料金が低いからだったりする。料金を支払う方は低い方が良いだろうが、自分がその仕事をした時に受け取る賃金も低いままで良いのだろうか?
そんな感じで適切な料金、適切な賃金について考えることが多い。
実は上の(a)~(i)のケースでは「効率」を無視している。
例えば、自分が使える時間が5時間だったとして、料金を支払って他人に任せていた仕事が1時間で済むのなら、その仕事を自分の1時間でやって、残りの4時間を賃金を受け取って任された仕事をすれば良い。
\( (j) \begin{cases}任せず自分でやった仕事\cdots 0円(1時間) \\任された仕事\cdots 4万円(4時間)\end{cases}\cdots 差額=+4万円 \)
ところが、合計すると1時間で済むはずの仕事が、20分の仕事の後に仕事ができない時間が40分あり、続く10分の仕事の後に仕事ができない時間が40分あり、続く20分の仕事の後に仕事ができない時間が40分あり、続く10分の仕事でようやく全ての仕事が終えたとなると、仕事の時間は合計では1時間だが、拘束時間が3時間になる。仕事ができなかった2時間が無駄である。
\( (k) \begin{cases}任せず自分でやった仕事\cdots 0円(拘束時間3時間) \\任された仕事\cdots 0円(0時間)\end{cases}\cdots 差額=0円、余った時間=+2時間 \)
自分が使える時間が5時間だったとして、料金を支払うのが嫌で自分でやった仕事に3時間拘束されて残った2時間では賃金を受け取れる仕事ができないとしたら、上の(k)のケースでは任せず自分でやった仕事が1時間だったとしたら4時間も仕事ができない無駄な時間になる。だから、つぎの(l)のようにしたい。
\( (l) \begin{cases}任せた仕事\cdots 1万円(1時間) \\任された仕事\cdots 5万円(5時間)\end{cases}\cdots 差額=+4万円 \)
1万円(1時間)で任された方は、拘束時間が長かったとしても、同時に複数の依頼を引き受けることで、仕事をしていない時間を減らすことができる。例えば、1万円(1時間)の仕事の拘束時間が5時間だったとしたら、5人から引き受けて時間を調整することで5万円(5時間)にすることができる。
世の中で多くの人が様々な仕事をしているのは、自分ができる仕事でも他人に任せて料金を支払っているのは、そんな「効率」を重視しているからだろう。
問題は単位時間当たり何人分の仕事ができるかということで、単位時間あたりに引き受ける数を多くすれば料金を低く抑えることができる。ただし、引き受ける数が多すぎると仕事の密度が高すぎて重労働になる。重労働であれば賃金も高くなければいけないはずだが、実際は低いままなのが、低賃金労働になっている仕事の現状だろう。自分でできるのに賃金を受け取る仕事をするために他人に任せている仕事に料金を支払う時は、自分の仕事と比べて任せた仕事の価値を低く見積もっていないかちょっと考えてみると良いかもしれない。
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