脳が自分の身体の変化を察知して感情が生まれるらしい

 昨日のNHK Eテレ サイエンスZERO「感情の科学 “体”とつながる心の世界」が面白かったのでメモ。

 どうやら感情が生じる前に身体の変化があるらしい。身体の変化を脳の島皮質(島回)が察知して感情が生まれるらしい。島皮質が機能しないと感情が生まれず、島皮質が身体の変化を敏感に感じ取りすぎると感情のコントロールが難しいらしい。感情のコントロールに関しては前頭葉との協力で制御するらしい。身体の変化に関しては自律神経が大きな働きをしているらしい。
 動悸や興奮などの身体の変化は感情によって生じるものだと思われがちだけど、番組では逆に身体の変化が感情を生むという流れ。外界の情報を目や耳などで脳に入れて自律神経に働きかけて身体の準備をし、身体が準備をしたら、その身体の状態を島皮質が察知して過去の経験などが詰まった前頭葉の情報を参考にして感情を発生させるらしい。
 番組のゲストは梅田聡さん。「島皮質 感情」で検索するなどして梅田聡さんが関わっている関連情報をメモしておく。

これは、島皮質が身体内部からの情報である内受容感覚の神経基盤として機能し、怒りや喜びなどの感情認識を支えていることを示すとともに、ドキドキやソワソワといった身体の感覚が豊かな感情を体験するために不可欠であることを示唆しています。本研究の結果から、島周辺領域の外傷性の変化や加齢性の変化によっても、感情の感じ方が変わる可能性が考えられます。

脳腫瘍手術前後で感情と身体内部感覚が変化する仕組みを解明-脳と心の脳神経外科学・認知神経科学の融合型研究-:[慶應義塾]

ポイント
○脳領域と心の機能の関係性は様々な研究が進められてきているが、実際にある領域を損傷や摘出した場合に、行動や感じ方に生じる変化については、明らかでない点が多い。
〇感情の体験と深く関連する心拍や呼吸といった身体内部状態の変化の知覚(内受容感覚)に関連する「島皮質(島回)」周辺に腫瘍を持つ症例を対象に、摘出手術前、手術後に内受容感覚と感情認識能力の検査を行った。
〇術前と術後の検査結果から、身体内部状態の知覚能力の低下と、怒りや喜びなどの感情認識能力の低下の間に関連が見られた。
〇ドキドキやソワソワといった身体の感覚が豊かな感情を体験することに不可欠であり、島回周辺領域の外傷性の変化や加齢性の変化によって、感情の感じ方が変わる可能性が示唆される。
○ヒトの脳を検証できる脳神経外科学と、ヒトの心を脳機能でとらえる認知神経科学が分野融合型共同研究を行うことで、島皮質が感情認識と密接に関わることを証明できたことは大変意義深い。

プレスリリース 脳腫瘍手術前後で感情と身体内部感覚が変化する仕組みを解明 ~脳と心の脳神経外科学・認知神経科学の融合型研究~

 感情を感じる過程において自律神経系や内臓反応といった身体反応が何らかの一次的な役割を持つのか,あるいは随伴現象に過ぎないのか,というテーマは,James (1884) に端を発し,人間が感情を感じるメカニズムを理解するための一つの視点として今日まで関連する研究が発展してきた。James (1884) は,感情とは“身体的変化から興奮している事実を感じとること”であると定義し,“速い心拍,深い呼吸,唇のふるえ,鳥肌,内臓の動きといった身体的変化がなければ感情も存在しえない”,と述べた。彼の記述は経験に基づくものであるが,生理学的に説明するならば,環境からの刺激が大脳皮質の感覚野や運動野を経由して起こした身体変化 (内臓変化・姿勢や表情) が,再び大脳皮質にフィードバックされ,これを知覚することによって感情の主観的経験が生じる,という主張である。この主張において身体反応の知覚は感情経験に不可欠なものであり,血管の収縮がもたらす血液循環の変化の重要性も強調したLange (1885/1992) の研究と併せて情動の末梢起源説,あるいは James-Lange 説として知られるようになった。この仮説に照らせば,内臓感覚が感情の種類や強さに影響を及ぼしている可能性が示唆されよう。仮説の妥当性に関しては長い間議論が繰り返されてきたが,心的過程に伴う脳活動を継時的に捉えられる脳機能画像研究の発展を機に,この仮説の重要性は見直されることになった。

内受容感覚と感情をつなぐ心理・神経メカニズム, 寺澤悠理・梅田聡, 心理学評論 特集:感情と身体 2014年57巻1号 p. 49-66

 「島皮質(島回)」と並んで重要なのは「内受容感覚」である。「島皮質(島回)」による「内受容感覚」の強弱で感受性が豊かになったり、それほどでもなかったり、共感する能力も強かったり弱かったりするということらしい。

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