平時に用無しで役立たずのコミュニティFMは災害時に役立つの?

 「#392 自治体による災害時のラジオ活用をどう進めるか? | 文研ブログ|NHKブログ」からの引用と感想を再開。

FM防災情報システムという存在、初耳の方がほとんどではないでしょうか。実は、今回の検討会の議論の中で新たに発案されたものだそうです。図2が取りまとめで示されたシステムのイメージです。防災行政無線の屋外拡声子局にFMの送信設備をつけ、防災行政無線の音声をFMで再送信するという仕掛けになっています。

#392 自治体による災害時のラジオ活用をどう進めるか? | 文研ブログ|NHKブログ

 上の引用の図2は令和4年3月の放送を巡る諸課題に関する検討会放送用周波数の活用方策に関する検討分科会の「放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ(放送大学の地上放送跡地及び V-Low 帯域)」の「図 11 FM 防災情報システムの基本コンセプトを実現するシステムイメージ」である。

放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ(放送大学の地上放送跡地及び V-Low 帯域)

 同じ資料の「図 12 FM 防災情報システムの利用形態」も分かりやすい。

放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ(放送大学の地上放送跡地及び V-Low 帯域)

FM防災情報システムの利用形態については、防災行政無線を補完し、車両避難者等にも確実に情報伝達を行う観点から、各地方公共団体における防災上重要な主要道路沿いの地域や避難所駐車エリア周辺等の小スポットエリアを対象とし、防災行政無線の屋外拡声子局から流れる情報と同じ内容を伝達する形態が想定される。

放送用周波数の活用方策に関する取りまとめ(放送大学の地上放送跡地及び V-Low 帯域)
令和4年3月 放送を巡る諸課題に関する検討会 放送用周波数の活用方策に関する検討分科会

 携帯ラジオやカーラジオで防災行政無線と同じ内容の情報を聞けるのは魅力的である。ただ、防災行政無線と同じ内容だけでは勿体無い。

 災害時の自治体のラジオ活用として開かれたもう1つの道が臨時災害放送局(災害FM)です。(中略)
 なぜわざわざ自治体の情報伝達にラジオが必要なのか、先に触れた防災行政無線で十分ではないのか、と疑問を感じる方もいらっしゃると思いますので少し説明しておきます。防災行政無線は主に屋外に向けて、短い言葉で避難を呼びかけたり注意喚起をしたりすることを主とする伝達手段です。しかし、避難生活が長期化する場合には安否情報や救援情報、生活情報や各種行政情報等の情報を整理して伝え、地域内の住民たちで共有し、それらの情報が的確に更新されていくことが不可欠となります。つまり、大量の多様な情報を伝達していくことが必要であり、防災行政無線だけでは担いきれないのです。

#392 自治体による災害時のラジオ活用をどう進めるか? | 文研ブログ|NHKブログ

 「防災行政無線は主に屋外に向けて、短い言葉で避難を呼びかけたり注意喚起をしたりすることを主とする伝達手段」であることは、その通りで、FM防災情報システムも同じ利用法しか想定されてない。
 でも、避難生活が長期化した際に必要な大量の多様な情報を伝達する時にもFM防災情報システムを使えば良いのにと思う。「だから臨時災害放送局(災害FM)を」ということなのかもしれないが、持っている携帯ラジオまで電波が届かないと災害FMは聴けない。FM防災情報システムなら災害FMの中継局のような役割を担えるように思うのだが、違うのだろうか?

 こうした状況に陥った際に活躍が期待されているのが、自治体を主なカバーエリアとする地域メディアであるケーブルテレビやコミュニティ放送局です。特にラジオメディアであるコミュニティ放送局は、災害対策への関心の高さから開局が年々増え続けています(図4)。大半の局が自治体と防災協定を結んでおり、いざという時にはタッグを組んで情報伝達する体制を構築しています。

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 災害FMだと災害のたびに設置しなければいけなくて手続きの手間もあるので災害前から用意されているコミュニティFMが期待されているのだけど、そのコミュニティFMも電波の届かないエリアがある。中継局を設置して受信できるエリアを広げようとしている所もあれば、中継局を撤去する所もある。

FM島田から、島田市内6中継局の内、5か所を休止するお知らせです。
休止する中継局は、伊久美中継局、北五和中継局、初倉南中継局、金谷中継局、笹間中継局です。
その理由としては、FM島田以外の情報伝達手段が充実してきたため
また、光回線などが整備され、市内全域でインターネットを使い、FM島田が聴けるようになったためです。
2022年3月末で休止となる各中継局の地域では、FM島田が聞こえにくいなどご不便をお掛けします。
ぜひ、インターネットラジオもご利用ください。

FM島田 中継局の休止のお知らせ / g-sky FM島田76.5

 中継局の維持にお金がかかるから休止するのだろう。その結果、コミュニティFMを聞けないエリアが生じる。これでは災害時にコミュニティFMは役に立たない。だから、コミュニティFMが設置する中継局の代わりにFM防災情報システムが使えるのではないかと期待している。防災行政無線が届かないエリアがあってはいけないので、防災行政無線を補完するFM防災情報システムでFM電波が届かないことがあってはいけないと思う。もしかしたら避難所や各駐車場などだけに受信エリアを限るつもりなのかもしれないが、FM防災情報システムで自治体内のどこにいても防災行政無線が聞けるようにコミュニティFMが聞けるようにしたら良いと思う。

 しかし制度上、平時から放送を行うコミュニティ放送局は自治体が免許人になれないため、民間事業者として地域内で広告スポンサーを確保し、日々の放送を維持していかなければなりません。災害対応、住民の安全確保という観点から見れば、どの地域にもくまなくコミュニティ放送局が整備されることが理想ではありますが、現状ではコミュニティ放送局の全国の自治体カバー率は5割には満たない状況に留まっています。
 一方、災害FMはあくまで災害時にのみ限定して自治体が開設し運営する放送局です。開設するのも簡単で、機材や一定の条件が揃えば、総務省に電話1本することで放送を開始できます。そのため、コミュニティ放送局がない自治体では、災害FMに対する関心が高まっているのです。

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 コミュニティFMは維持するのが大変なので災害FMの方が良いという意見。その通りかもしれない。だから、コミュニティFMは平時から役立って地域住民に愛されてないといけない。そんな放送にしないといけない。住民のほとんどに愛されているラジオ局ならば維持しやすいはず。

 もちろん課題もあります。災害が発生してからの対応になるため、①自治体が開設を希望していても実際に周波数が空いていなければ開設できない、②周波数を事前に(平時から)住民に伝えておくことが出来ず、周知が発災後になるため認知されにくい、③ラジオ端末を持っている人が少なく、日頃からラジオを聞いたことがない人も少なくない、④機材の準備や運営のノウハウ、スキルを持った人の確保が必要、等です。特に首都圏エリアは他の地域に比べて①の課題が深刻でした。そもそも空いている周波数が少ないのです。

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 災害FMの課題だけど、①も②も③も④も住民に愛されているコミュニティFMなら問題ない。①は既に開設済み。②は地元のコミュニティFMの存在が知られていれば問題ない。③は地元のコミュニティFMを聴く人が多ければ問題ない。④はコミュニティFMの人材では心許ないけれど増やすことはできる。
 ①の対策として「災害FMの専用周波数としてあらかじめ確保しておくという方針」が提案されているみたいだけど、コミュニティFMなら既に専用周波数が確保されている。「日常的に帯域を活用するのではなく災害の備えとして活用するという方針」は常に放送しているコミュニティFMと比べて人件費が節約できる点でメリットがあるのかもしれない。

 また検討会では、首都圏エリア以外でも、こうした災害FM用の専用帯域の確保や希望する自治体との調整、あらかじめ固定した周波数を住民に周知するといったことが出来ないのか、という意見があがっていました。総務省に尋ねると、首都圏エリアはもともと周波数が足りない状況の中で首都直下地震が想定されていたため、放送大学跡地の議論が今回の方針につながったとのこと。そのため他の地域で同様の議論や方針を示すことは今のところ考えてはいない、とのことでした。

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 コミュニティFMを設置したくなくて災害FMを設置するための帯域だけは確保したいということだろう。分かる気がするが…。それだけコミュニティFMは平時には用無しということなのだろう。

 近畿総合通信局では、南海トラフ地震に備えて和歌山県の沿岸自治体12市町村で、災害FMを同時開局できるかどうか周波数を選定するシミュレーションや実地調査を実施し、その結果を自治体と共有する取り組みを行っています。(中略)和歌山県の場合は首都圏エリアとは逆に、空き周波数があるためにこうした取り組みが可能ですが、全国各地でそれぞれのエリアの実情に応じながら、地域の総合通信局がイニシアチブを取って、平時から自治体等と連携した災害対応の取り組みをより積極的に進めていくことが求められているのではないかと思います。

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 「コミュニティFMを利用すれば良いのに…」と思う。

 こうしたハードの準備以上に重要だと私が考えているのが、住民にとって必要な情報をわかりやすく伝えるスキルを持った人材の確保・育成です。マイクの前に座って災害対策本部の原稿を読めばいい、というところから一歩進んで、どうしたら混乱している人達が冷静に行動できるような伝え方ができるのか、どうしたら不安な人達が安心できるような話し方ができるのかについて、あらかじめ想定した準備をして欲しいというのが、これまで災害FMを取材してきた私の意見です。

#392 自治体による災害時のラジオ活用をどう進めるか? | 文研ブログ|NHKブログ

 これはその通りだと思った。上の「④機材の準備や運営のノウハウ、スキルを持った人の確保が必要」と同じ。パーソナリティの人材確保・育成が必要。それはコミュニティFMを運営していれば可能だろう。人材育成を怠っている所もあるだろうが…。

 そのために貢献できるのが地域の情報伝達のプロフェッショナルである地域メディアの存在です。首都圏エリアで災害FMの開設を希望する自治体の中には、ケーブルテレビとあらかじめ運営に関して協議をしたり協定を結んだりしている地域もあり、非常に心強く感じます。また、先に紹介した和歌山県情報化推進協議会は、県下の県域民放やNHK、コミュニティ放送局等が参加している組織で、自治体職員や地域住民に対して、取材や放送の方法等を、訓練を通じて伝える活動をしています。こうした平時からの地道な活動こそ、地域メディアの果たすべき重要な役割の一つではないかと思います。

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 平時のコミュニティFMにも役立てることがあるようだ。そんな感じで期待されるコミュニティFMでありたいものである。パーソナリティや記者の確保で無賃金のボランティアに頼っている所があるが、無賃金では人が集まらなくても「災害時のための訓練」と呼びかけることで集まるかもしれない。

 更に、こうしたプロフェッショナルメディア、特に災害時にも活躍が期待される県域ラジオ局と自治体の連携が深まれば、災害時に自治体の情報をそのまま放送する枠を設けるといった取り決めも可能かもしれないと思ったりもしています。あらかじめ県域ラジオ局と自治体の間で、衛星電話を繋いで情報を伝えるという時間枠を確保する協定を結んでおけば、その自治体はわざわざ災害FMを立ち上げなくても情報を伝達することが可能でしょうし、住民にはあらかじめ、災害時には県域ラジオを聞いてください、と伝えておくことも可能でしょう。もちろん、県域ラジオ局には独自の編成があるわけですから、あくまで現時点では私見ではありますが、ただ、取材に行ったり独自に情報収集したりすることすらままならない激甚災害においては、自治体のみならず県域ラジオ局にとっても有効なのではないかと思いますし、複数の県域ラジオ局がある地域においては、こうした自治体情報を束ねる災害放送を行うチャンネルがあってもいいのではないかと思います。

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 この「県域ラジオ局」の所は「コミュニティFM」でも良いし、「県域ラジオ局」よりも「コミュニティFM」の方が身近な情報を伝えられる。例えば、「県域ラジオ局」だとしたら市原市の情報はbayfmやNHK千葉が放送することになるが、市原市の情報は成田市の人は興味ないだろうから、市原市の情報は市原市のコミュニティFM、成田市の情報は成田市のコミュニティFMと協定を結んで同じことをすれば良い。

 読みながら、帯域だけ自治体に残して閉局するコミュニティFMが増えたりして…なんて思った。コミュニティFMが利用していた周波数で災害FMを設置しても、住民のラジオまで電波が届かなければ役に立たない。コミュニティFMを利用して受信できるかどうか確認しておけば災害時に電波が届かないなんて失敗はしない。現在、電波が届かない所はたくさんあるはず。その対策としてFM防災情報システムが使えるのではないかと思ってる。災害時の準備として、コミュニティFMの放送をFM防災情報システムで届けられたら良いのにと思う。そうやって、電波が届かない所を無くしていく準備が必要だと思う。

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